Etsy アメリカ向け配送へ実質的なDDP義務化
2026年6月9日、Etsyは出品者向けハウスルールの変更を告知しました。2026年7月9日以降、米国の買い手へはDDP (Delivered Duty Paid 関税元払い) で発送してはじめてEtsy購入保護の対象になるという内容です。これは出品者にとっては実質的な義務化と考えて差し支えありませんが、罰則ではなく保護の可否で運用されることになります。これまで遅延・不着・破損といったトラブルは一定の条件下でEtsyが返金を肩代わりしてくれましたが、DDU (関税着払い) で送った米国向け注文はこの保護から完全に外れることになります。荷物が遅延・不着になって買い手がケースを上げると (買い手が注文のトラブルをEtsyに申し立てること)、返金の責任は出品者が負うことになります。さらに、買い手が関税や立替手数料を配送業者から請求された場合、その金額も返金対象となり出品者から差し引かれます。
対処方法としてはシンプルに、関税・輸入手数料を含めたすべてのコストを予め商品価格に織り込むことです。買い手が決済時に着地価格を支払い、受け取り時に想定外の請求を受けない状態にするという考え方です。Etsyは関税専用の入力欄を特に用意しておらず、出品者としては自然と価格そのものに内包させることになるでしょう。Etsyはこの変更を、一貫した信頼できる購買体験のためと説明しています。同社の調査では、米国のEtsy購入者の約3分の2が、受け取り時に関税を請求されるなら購入をためらうと答えたとされ、着払いによる税関での足止めや受け取り拒否が、クレームや返金という形で最終的に出品者に跳ね返って来ている、という問題意識が背景にあるようです。
このDDP義務化は、Etsyの都合というものではなく、米国の輸入制度そのものの変化の上にあります。それはデミニミス (少額免税) ルールの撤廃です。デミニミスとは、一定金額以下の荷物を関税無しで通関させる仕組みで、米国では長らく1個あたり800米ドル以下の輸入品が免税とされてきました。個人が海外から取り寄せる小包の大半は、この枠に収まっていたのです。ところが米国は、2025年5月2日に中国・香港、同年8月29日にはそれ以外のすべての国について、この少額免税ルールを停止しました。結果として、今では金額の大小にかかわらず、米国に入るほぼすべての荷物が正式・簡易いずれかの通関を経て関税の対象になったのです。
日本から米国へ荷物を送ると関税率はどれくらいになるのでしょうか。現時点 (2026年8月) の答えは単純で、日本原産の商品のほとんどは実効税率12.5%になります。2025年7月の日米貿易枠組みで、日本原産品にはいったん15%の相互関税が課されました。ところがこの15%は2026年2月に法的な根拠を失い、暫定的な課徴金を挟むなど紆余曲折の末、7月24日から通商法301条にもとづく上乗せ関税に落ち着いています。これにより、日本原産品の実効税率は「MFN (WTO加盟国などに対して一般的に適用される最恵国待遇) 基本税率に基づいた関税率と12.5%の高い方」となりました。税率は品目毎に振り分けたHSコードによって変わり、12.5%以下の税率であれば12.5%、12.5%以上の税率であればそのままとなります。言い換えると、基本税率は12.5%で、MFNで税率が高い品目だけそのまま同じ税率となります。
出典 :
Navigating Evolving Global Tariff Policies – Etsy Seller Handbook
Notice of Actions in Section 301 Investigations – U.S. Federal Register